銀座一丁目、桜通りに面した大きなウインドー、ガラス越しに飾られた絵に人々が目を留める画廊があります。この日も色あざやかな絵画が、春の街を行く人たちの視線を集めていました。
「この大きな窓が、ムサシの最大の魅力かもしれませんね」とは、現在、代表を務める石田純子さん。
一階の路面店という立地のよさについては「ご先祖のおかげです」。
前身は弘化二年創業の和家具店「丸徳武蔵屋」で、創業百五十年目に画廊に転業。江戸時代からこの地で商いを営んできたからこその好立地、屋号も和家具店名を引き継ぎました。
地の利に加え、作品が映える展示空間にも定評があります。
「画廊は晴れ舞台ですから、わたしどもは作家さんが生み出した絵の最高の晴れ姿を演出する美の裏方なのです」と、石田さん。
開廊以来、最大の試練はやはりコロナ禍でした。
「銀座がシャッター通りになる日がくるなんて……でも、人通りの絶えた銀座通りを目にしたときの衝撃は、ギャラリストとしての使命感に火を点けました。銀座から画廊の灯を消したくない、画廊こそが銀座のランドマークなのだからとの思いに導かれ、けして扉を閉めませんでした。以来、なんだか腹が据わった気がします」
そう当時をふりかえります。
苦難を経て、ムサシは来年三十周年を迎えます。この節目に記念展を計画中とか。
「これまで、ご縁をいただいた先生がたの作品が一堂に会する、華やかな展示になる予定です。作家が画道を追求するなら、わたしが進むのはいわば〝ムサシ道〟。異文化を受け容れる包容力と伝統を支える底力を秘めた銀座で、ムサシ道を追求していきたいのです」
三十周年を目前に、言葉もひときわ熱を帯びます。春風吹く季節、一丁目のギャラリームサシから銀ぶらをスタートしませんか。
(撮影:大森ひろすけ) |