「銀座かなめ屋」は和装小物専門店。店名の由来を聞けば「きものを着るときに肝心かなめとなるものを扱うから」だそうで、名の通り、かんざしや帯留、草履など全身しゃれたコーディネートがかなう小物がそろいます。
創業九十周年を迎えたお店を切り盛りするのは、三代目店主の柴田光治社長。もともと銀座は新橋花柳界がある街だったことから、きものを着る女性たちも多く、彼女たちも訪れる店として評判でした。いまでもきものには欠かせない小物の専門店として、変わらぬ真価を発揮しています。
柴田社長の和装と店に思う“要”は、大きく分けて三つあるそう。一つ目は「背景にあるストーリーを大切にすること」。社長自らしたためるブログは、まるで歳時記のよう。かんざしや扇子など、めぐる季節にふさわしい品を紹介し、読者の興味をかきたてます。
二つ目は「TPOに応じた小物選びをすすめること」。親より上の世代の人に着付けを習うことが常識でなくなったいま、店頭で「結婚式に呼ばれたときにふさわしい小物はどれですか?」と尋ねられる人も多いのだとか。柴田社長いわく、「わからないことがあればぜひ気軽にご相談ください」とのこと。
そして三つ目の“要”は「江戸の伝統を次代に継承すること」。たとえば“江戸べっ甲かんざし”はワシントン条約で新たな輸入を禁じられた海亀の一種、タイマイの甲羅が素材の希少品。中でもかなめ屋で扱う“白べっ甲菊彫りかんざし”は、甲羅のうち飴色の半透明で斑(ふ)の模様が入らない、特に稀有な部位を使う白べっ甲が最高級なら、それに見事な乱菊の花を彫り仕立て上げる職人の腕も、超一流なのです。こうした伝統工芸品を「中央区まちかど展示館」として、店内の一画で供覧する活動にも力を入れています。
(撮影:大森ひろすけ) |