季節の移ろいを旬の味から感じたいなら、銀座ハゲ天へ。三丁目のガス灯通りからレンガ通りへ移転して、四年目を迎えます。
ハゲ天は昭和三年、創業地の九段より銀座に進出しました。初代・渡辺徳之治氏は、みずからのあだ名を暖簾(のれん)に掲げたというユニークさ。柔軟な感性の持ち主だったことがうかがえます。
二代目の渡辺亘氏はテイクアウトにも力を入れ、天ぷらを家庭でも手軽に楽しめるように尽力したことで、農林水産大臣賞を受賞したとか。
そして三代目・現渡辺徹社長は全国十九店舗を展開し、伝統の味を守るとともに、銀座本店で新たな試みに挑戦しています。
ハゲ天の味の秘訣は、ていねいに継ぎ足されるごま油の扱いと、卵を多めにした衣に隠されています。ごまの風味を活(い)かしながらも重すぎず、ふわふわサクサクとした食感になるのです。また、定番だけではなく、変わりダネが大得意。他店ではまず見ない食材も、積極的に取り入れます。
ランチで一番人気なのは「銀座本店オリジナルランチ」。海老三尾、魚介、野菜、変わりダネ三種、かき揚のコースで、食材の組み合わせの妙を提案しています。メニューは月替わり。変わりダネについては料理長とスタッフがいくつも試作を重ねるそう。さらに試食会を経て、いちばん支持を集めたものが採用される、まさにハゲ天の真髄を味わえるコースです。
七月のおすすめは鱧(はも)や水ナス、甘長(あまなが)とうがらし、そして江戸前天ぷらの最高峰といわれる銀宝(ぎんぽ)。これら旬の味にどんな変わりダネが加わるでしょうか?
現店舗は油の匂いが服に染みつかないよう工夫されていて、気がねなく立ち寄れるのも魅力です。ゆかたで天ぷら、そんな夏の楽しみ方はいかが。
(撮影:大森ひろすけ) |