五丁目、西銀座通りとみゆき通りの角に風格のある店舗を構える壹番館洋服店。
一九三〇年の創業以来、オーダーメイドのテーラーとして気品のある本格的な紳士服の文化を発信しつづけています。
創業者の渡邊實は少年のころ、鹿鳴館時代の一着のフロックコートに魅せられました。それは中国人テーラーが英国製の生地を使って仕立てたもの。ほぼ四十年の時がたっていたにも関わらず、美しいシルエットはそのままですばらしい仕上がりでした。このコートとの運命的な出合いによって壹番館洋服店が誕生したのです。
現在の社長は三代目の渡辺新さん。大学を卒業後、イギリスとイタリアで服づくりを学び、九七年から社長をつとめています。
服をオーダーする楽しみについて、渡辺さんがこう語ってくれました。
「お買いものも長年していると目が肥えて良い買いものができるようになりますよね。オーダーも同じです。オーダーは生地やスタイルなどお客さまが選ぶことが多く、手間がかかります。でも、続けていくと、服の知識も増え、ご自身を客観的に見ることができるようになります。そんな、自分探しの旅のサポートをするのが、われわれテーラーの仕事です」。
顧客は新成人から九十九歳まで。年齢は関係なく、服が好きで、オーダーの魅力を知る人たちです。
コロナ禍を境にリモートワークが増え、カジュアルな服装の人が多くなりました。しかし、そんな今だからこそ心を惹かれるのがオーダーの服ではないでしょうか。生地選びや仮縫いなどに時間をかけて熟練のものづくりを体験し、一人の職人が何日もかけて丸縫いしたスーツに袖をとおして着心地のよさを味わう。
そんな本物との時間は、心に豊かさを与えてくれます。 |